大川田川の流域

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 種子島で一番きれいな川と言えば、河口が安城大野にある大川田(おおこうだ)川でしょう。川の長さは約8キロ前後と推定されます。最上流は、二本松の屋久川付近まで及んでいて、川沿いには、人家がないため生活排水による汚染もまったくありません。河口付近と、鍋割付近の川沿いに田んぼがあるだけです。夏にも1回訪れていましたが、再びこの川を散策してみることにしました。

橋げた付近から上流方向を見た様子  11月20日、この日は晴れていましたが、霞がかかり山間の眺めも青みがかったような感じで、遠くを見るにはあまり適さない天気になっています。西之表市街地から県道76号線を通り、7番を経由して安城へ向かいます。車で走ること25分、大野を少し過ぎると、大川田川河口入り口に到着です。ここで、車から降りて河口へ下って行きます。

 少し坂を下ると、大きな橋げたが見えてきます。この河口付近の県道は、大きく蛇行しているので、県道の改修工事が行われています。直線道路にするため海岸すれすれのところに橋をかける工事が進められ、現在、第1期の工事は終わっていますが、すでに橋げたが3本建っています。大野側に1本、立山側に2本建っていますが、川沿いに建っているものが一番高く、やがて50メートルに近いと思われます。この工事で河口付近の流れが従来と大きく変わり、橋げたで流れが蛇行しています。

 この付近の川を上流に向かって少し進んで見ると、何と言っても透明度が素晴らしい。11月ということで、川には何もいない時期です。少し深みのところを見ていると、何と「ちゅくらんぴー」がいるではないか。何という懐かしいことか。久しぶりに「ちゅくらんぴー」と対面できて感激でした。ほかに何もいないのか?ビッチョはどこ?・・・残念。あちこち探してみるけど「ちゅくらんぴー」以外はいません。河口の橋げたから150メートルくらい上流に来ると、川幅も結構広くなり川らしくなってきます。その川沿いに田んぼが広がっています。そして、県道に出て大川田橋に向かうこと。この大川田橋は、「昭和37年2月架換」と書かれてあり、相当年月が経っています。

 県道75号線から上流に向かうのです。原則的に、鍋割橋に出るまではのぼりざかがず〜っと続くのです。左が川で、右が山手になります。川は両方の高い山で囲まれ官山になっています。そして川沿いは、広葉樹や杉林に囲まれています。1キロも上流に来れば、川幅も少々狭まってきます。川が二手に分かれ、そしてまた一つになっているところがあり、川に出てみました。川の中で静かに立っていると、ただ、せせらぎの音が快く響いてきます。まさに自然の音の世界です。思わず時を忘れそうです。そして、川幅が広く水深もあり流れも穏やかなところをじっと見つめていたその時、川岸の広葉樹の枯れた葉っぱが、ひとひらゆっくりと舞い落ちて、水面に浮かぶ様子は、あまりにも出来過ぎです。

「大川田水面(みなも)に落ちる枯葉かな」
何ともドラマチックな瞬間に遭遇するとは…。しばらくその枯葉を見つめ晩秋を感じていました。

 ちょうど、県道から2キロのところに橋が架かっています。相当古いのか、いつ頃架けられたのかまったく分からなくなっています。この橋の上流側は、かなりの深みになっていますが、底まではっきり見えています。深いところで、1メートル以上はあり、川の長ささは10メートルくらいと思われます。川幅は狭いが・・・。今まで、川の右側を通っていましたが、この橋で左側を通るようになります。道路沿いの花木は、アメリカフヨウやクサギの花があちこちに咲いています。場所によっては、食わず芋が密集して生えているところもあります。

 さらに進むと、また橋が架かっていますが、年代ものでいつ頃のものか分かりません。だいぶ古いのでしょう。この橋の右下で川が支流に分かれています。おそらくこの支流は、水量も多いので、万波方面にいっていると推定されます。この辺まで来ると、川幅もさらに狭まってきます。狭くなったところのせせらぎの音が、川の谷間に響き、もううるさいくらいです。川幅が狭くなり、ぐるりと蛇行しているところもあり、道路からの眺めも素晴らしいです。さらに進むと、また橋が架かっています。右が下流、左が上流になっています。少し先へ行くと、道から左手に赤い実のなったクロガネモチが生えています。その木は、川沿いにありとてもいい見栄えでした。

県道から2.5キロ付近の様子  上流に向かって進むこと約3キロ付近か、道路の右側の土手からきれいな湧き水が流れています。その小さなせせらぎが何とも言えぬ自然の音、そして、時折聞こえるヒヨドリの声も響き渡り、自然の中にいることを十分感じとれます。そしてツワの葉っぱを丸めて、この湧き水をすくって口に含むと、毎日飲み慣れた水道水とは明らかに違う水の味わいです。なんとも飲み応えがたまらない瞬間です。その湧き水とツワの匂いが、超自然を形成してくれ、まるで遠い昔に戻ったようなつかの間のひと時を感じてしまいます。

 もうず〜っと上り坂です。4キロを過ぎたところに橋が架かっています。これは支流の橋です。さらに進むと5キロ付近にも橋があります。そして少し先に行くと、川沿いにヤクタネゴヨウが1本立っている場所が見えてきます。直径は30センチ前後、大木ではないがす〜っと伸びています。川沿いで見るこの松は珍しい。種子島でも絶滅が心配されているヤクタネゴヨウは、最近ボランティアにより、植樹も行われその保護にようやく動き始めています。

川沿いのヤクタネゴヨウ  さらに上流に向かって進み6キロを過ぎると、道の両サイドに小さい松がたくさん生えています。全般的に山の森林も伐採されているところはほとんどなくて、自然が保たれています。おそらくこの中には、ヤクタネゴヨウも生息しているに違いありません。そんな自然がこの川沿いにはまだまだあるようです。だからいつまでもきれいな清流が続いているのかもしれません。7キロ付近でやっと鍋割にたどり着き散策も無事終了です。鍋割橋は、昭和41年6月に完成しています。そして上流は、二本松に向かっています。この橋のすぐ西側に田んぼがありますが、人家がない分きれいな清流が保たれています。

 開発も必要な時がくるかもしれないが、人間を癒してくれる自然は、いつまでも残していきたいと感じた約3時間の散策でした。

※散策日:平成16年11月20日
※「ちゅくらんぴー」→ハゼの一種
※「びっちょ」→川にいる小さなエビのこと

 

大川田川の流域の地図「大川田川河口」をスタート
↓←写真2枚目
橋げた工事中
↓←写真1枚目
大川田橋

2キロ地点を通過
↓←写真2枚目
3キロ付近を通過

4キロ付近を通過

5キロ付近を通過←写真3枚目

6キロ付近を通過

終点、鍋割橋7キロ地点